薬局や病院で働き出しても受け止めることが出来ない現実に悩まされる薬剤師は少なくありません。 薬剤師は一生職場をかわってはいけないなんて制約なんてどこにもありません。 薬剤師である前に一人の人間であるため、辞めるのも当然の権利です。
しかし、本当に辞めてもいいのかな?と自問自答してしまうのは人間の性でしょう。 私自身も前の職場を辞めて転職を決断するまでには多くの時間と労力を要しました。 今回は、私の経験談から薬剤師が転職を行う上で気を付けておきたいことについてご紹介していきましょう。
私が仕事を辞めたいと思った理由
とある病院に勤めて3年目が過ぎようとしていました。 私の勤めていた病院は1年目で内服薬・注射薬の調剤や高カロリー輸液・抗がん剤などのミキシングなどの大まかな薬剤師業務を覚えます。 2年目からは病棟業務が本格的に始まり、経験を積むためにいろいろな診療科をローテーションで勉強します。 患者さんとの関わりが多くなり、薬剤師としてのやりがいを感じやすくなるのがこの時期です。 また、1年目の後輩もできるので、教えることで自分の知識や仕事を整理することが出来ます。 業務シフトも固定でなくローテーションだったので、1年間調剤室に張り付けなどもなく、色々な業務をこなしながら経験を積めることは私にとってとてもいい職場でした。 そんな私にとって、3年目は大きな転機となりました。 私が感じた仕事を辞めたいと思った理由は次の3つです。
①残業時間の多い ②学会発表が負担 ③人間関係の悪さ一つ一つ紹介します。
増える残業時間
私が働いていた病院は、600床を超える比較的大きな総合病院でした。 薬剤師数も多く、年々増えているため、私が入職してから特に薬剤師不足を感じることはありませんでした。 しかし、総合病院ならではなのか、病棟薬剤業務実施加算を算定するために全患者に記録を書くことを強要されたりすることもありました。 次々に増える業務に対して薬剤師のマンパワー不足が露呈し、定時を過ぎた時間外の時間を使わなければ仕事が終わらないなんて状況も増えてきてしまいました。 3年目を迎える私はこの業務量の多さに伴う残業時間の多さに耐えることが出来ませんでした。
学会発表を強要される
3年目になるとこれまでの経験を生かしてという名目で学会発表を行うように言われました。 大学時代に発表経験もあるため、特に不安はありませんでした。 しかし、先に紹介した業務量の多さを知ってそれを求めるのかと驚愕してしまいます。 調剤や病棟業務をし終わる時間は20時を超えています。 これから学会発表の調べ物や準備を要求するなんて信じられません。 発表ネタもきちんと提供してくれないのにも関わらず発表だけしろなんてそんな都合のいいことありません。 学会発表させるのであれば、それが出来るような環境づくりをしてほしいとずっと思っていました。
職場の人間関係の悪さ
薬剤師の仕事を一番理解してくれる職種はどこでしょうか? 処方を出している医師、患者さんに一番近い看護師、それとも医療職種同士は分かり合えているのでしょうか? 私は薬剤師の仕事を一番理解しているのは薬剤師だと思います。 業務が終わらずに調剤をずっとしていることを見ているのも薬剤師です。 なのに私のいた薬剤部は、協力するということを知りませんでした。 仕事が早く終わる部門ももちろんあります。 1週間のうち比較的業務量が少ない部門も存在します。 なのに、仕事が早く終わった薬剤師はまだ終わっていない薬剤師をしり目にさっさと帰宅してしまいます。 薬剤師の仕事を一番にわかっている薬剤師が見て見ぬふりをしてしまえば、それはもう誰にも伝わることはありません。 病棟で業務をしている時、『お薬はまだ上がってきませんか?』、『薬が来ないと残業時間が増えます』、『患者さんに早く飲んでもらわないと治療に影響します』などと文句を言われる辛さを知っているのに。 薬剤師と薬剤師の人間関係はそう悪くないのに、職場としても人間関係は最悪な状況に耐えきれませんでした。 こんな状態が続けば、私が仕事をやめようと思うまでに多くの時間はかかりませんでした。
転職するときに考えたこと
結果的に私は転職することを選びました。 しかし、すぐに転職に踏み出せたわけではありません。 仕事に対する悩みが生まれて転職するといった結果に至るまではいくつかのステップを踏むことになりました。 ここでは、私が転職を決意するまでに考えたことを3つご紹介します。
誰かに相談する
『仕事を辞めたい』、『転職したい』そう思っているのは私だけではないはずです。 それにきっと我慢して働いている先輩や後輩もいるはずです。 だって、きっと私だけが嫌な思いをしているわけではないから。 自分一人で考えて完結するには、私には経験が絶対的に足りないと思いました。 それに、仕事を辞めたいなんてみんな普段から思っていることかもしれません。 この価値観自体が間違っていることも考えられたため、信用できる先輩薬剤師の先生に相談してみることにしました。
私は2人の先輩に相談しました。
一人は職場の仲がいい先輩です。 この先輩は、私が新人の頃の教育係でもあります。 仕事の悩みやプライベートの悩みまでいつも相談に乗ってもらっていました。 なので、今回の仕事を辞めたいという思いについても相談してみることにしました。 意外だったのは、先輩はすでに私がそう思っていることを知っているようでした。 そこで私に言われた言葉は『辞めないでほしい』でした。 仕事の本質ややりがいと知る前に辞めるのはもったいないと教えてくれました。 少なくとも5年はしっかり働いてみて、楽しいいも辛い思いも経験してそれでも辞めたいと思ったらもう一度相談してほしいと説得されました。
もう一人は大学の先輩に相談しました。 大学の先輩は研究室が一緒でよく一緒に飲みに行ったりしてお互いの恥ずかしい話もしあう中だったので辞めることについても隠さずに相談しなきゃなって思っていました。 先輩は病院に1年間務めていましたが、2年目から薬局に転職した経歴を持っています。 当初薬局では6年目になり管理薬剤師も任されていたので、私にない薬局目線の話も踏まえてアドバイスをもらいました。 先輩からは、『一度しかない人生だし悩んだ時に行動できることも大切だよ』と転職を進められました。 病院から薬局への転職は、休みこそ土日連続で取得することが病院に比べると難しくなりますが、給料面でも待遇改善や少人数だからこその和気あいあいとした環境下での仕事はとても楽しいと教えてくれました。 私が経験していないことを教えてくれたことは、一度しかない人生の勇気ある選択をする上で大変貴重なことでした。
辞めても後悔しないか
私が病院に就職した理由は、次の3つです。
①注射薬について勉強したかった ②多くの医療職種との関わりを大切にしてチーム医療に携わりたかった ③キャリアアップを大切にしたかったこの3つに共通しているのは、薬剤師としての仕事のやりがいです。 6年制教育を受けて取得した国家資格は私にとって運転免許と同じ感覚でした。 つまり、薬剤師として働く上で最低限のことを保証するための資格であり、薬剤師としての質を担保するものではないという認識でした。 そのため、薬剤師として知識を存分に生かし、キャリアアップにつながることが出来そうな総合病院を選択しました。
仕事が辛く仕事を辞めて転職を考えていた私ですが、今の環境から離れてしまうことは、私が思い描いていた薬剤師像から遠ざかってしまうことを意味します。 私がなりたい薬剤師になるためには、今の境遇は耐え忍ぶことが必要なのかなと思い悩んだ時期もありました。
果たして辞めることが出来るのか
これが一番の問題かもしれません。 私の職場は割と若い薬剤師が多い職場でした。 そのため、結婚をタイミングに退職する女性薬剤師は比較的多いといった状況でした。 もちろんおめでたいことなのでダメと言われたということは聞いていません。 ですが、当時の薬剤部長の先生からは、『辞めるタイミングは選んでほしい』と言われていたそうです。 新人薬剤師が入るまで又は、新人が独り立ちするまではいてほしいという思いの裏返しだと私は認識しました。 私の脳裏に浮かんだのは、 新人が入らないときは辞めてはいけない? 薬剤師が極端に少ない状態になることは避けられています。 確かに、結婚したときに仕事は続けてほしいとお願いされていると聞いたことがあります。 薬剤師不足は都心を除けばまだまだ深刻です。 私が働いていた田舎の総合病院ではそれは顕著です。 辞めるのであればそのタイミングは外すことはできそうにもない。 これが私が感じた疑問でした。
失敗しないためのアドバイス
私は病院に3年間勤めました。 薬剤師として4年目になる年から私は別の病院で働いています。 結局相談した先輩2人の意見をどちらもとった形になりました。 仕事を辞めて転職するが病院には務める。 これが私が出した答えです。 ただ、転職に至るために私が注意したことがあります。 これが皆さんに送るアドバイスになるでしょう。
転職経験者の話は話半分にとどめる
私の大学の先輩は転職成功者でした。 そのため、転職について否定的でいないといったことが挙げられます。 ですが、私の職場の先輩から言わせると転職は成功ばかりとは限らないとうことを教えてくれました。 考え抜いた結果転職したことを告げると、先輩は元同僚の転職経験を教えてくれました。 私のように病院の激務に嫌気がさし、時間外が多い、でも給料は少ないということで薬局に転職した先輩がいたそうです。 給料は1.5倍くらいもらえるようになり、定時までとは言わないですが、18時には自宅に帰ることが出来るようになって転職当初は先輩も転職すればいいとよく言われいたそうです。
しかし、狭い環境の薬局で医療事務の方との折り合いがうまくいかず、仕事はやりにくい、薬局に居場所がないといった状況になってしまい、結局また転職してしまったとそんな状況になったそうです。 こうなると人間は逃げ癖がついてしまうようで、嫌なことや条件に合わないことがあるとすぐに転職してしまうようになってしまい、挙句の果てには転職しすぎて転職が難しくなってしまったなんて事態に陥ってしまったと告げられました。 若い頃はみんな現実を知らないからすぐに辞めたがる。 そんな薬剤師を見てきた先輩は、そうならないように私を止めてくれていました。
ここで私が感じたことは、成功体験があるから必ずしもいいこととは限らないということです。 良い面があるといいことは少なからず悪い面もあると私は考えています。 転職についても、良いと感じる人がいるということは悪いと感じる人も必ずいます。 その悪いと思った人の意見を聞いてそれでも転職したいと思って始めて自分の意志をもって転職することをお勧めします。
転職サイトを利用する
転職には必ず転職サイトを利用しましょう。 転職経験者の意見はいくらでも聞くことが出来ますが、それが私に合っているかなんてわかりません。 私にとって転職は初体験です。 未知の領域のため、経験者の話を聞きますが、それもケースバイケースです。 あくまでも一経験談にしかとどまらないということを忘れてはいけません。 わからないことは、プロに効くのが一番です。 多くの転職に関わっているため、成功談も失敗談も多くの経験があります。 そのため、私に合った転職について親見になって相談に乗ってくれます。 プロならではの意見も提案してくれるため、新しい職場の通勤手当や住宅手当などの福利厚生の条件や働き始めないとわからない職場の内情まで教えてくれます。 いざ転職をしようと思ってもやり方も情報をありません。 気軽な気持ちで転職サイトに登録してみましたが、そのスピーディーな対応と情報量は転職に対して不安だった私を安心させてくれるには十分でした。
自分が求める転職条件を伝える
あくまで私の気持ちですが、私の転職はステップアップでした。 動機は仕事が辛い、辞めたいなどネガティブなものでした。 ですが、転職サイトの方と話しているうち、私が働き出すときに抱いていた気持ちを思い出すことが出来ました。 転職を希望していた私は、残業がない職場を希望していました。 しかし、入職当時、薬剤師としてのやりがいを求めてチーム医療やキャリアアップに重点を置いて総合病院を選んでいます。 働き始めて曲がってしまった私の価値観を修正し、私がもともとなりたかった薬剤師像へ近づかせてくれたのは転職サイトの方の助言です。 そのため、当初は薬局やもう少し規模の小さい病院に転職しようと考えていました。 ですが結果的に、私が抱いていたやりがいを重視し、大学病院へ転職することが出来ました。 新しい職場となったこの病院は、福利厚生こそ前の職場と同条件でしたが、薬剤師の数が前の病院と比較して1.5倍くらいいます。 そのため、求められている業務は同様でしたが、過度な業務量にならず、研修や勉強会参加など活発に行っている環境でした。 大学病院ならではで、大学院に進学したりしている志の高い薬剤師が多く、日々切磋琢磨しています。 そのため私の転職は、私が当初思い描いていた薬剤師像に近づく形となりました。
まとめ
薬剤師の転職は国家資格であることやその需要から他の職業に比べると比較行いやすいものとなっています。 みなさんが思い描く薬剤師像は様々かもしれません。 転職は、私のようにやりがいと求めたり、大学の先輩のように職場環境を求めたりとその希望をかなえてくれます。 自分の芯をしっかり持てば、同期はどうあれきっと良い転職になるはずです。 そのためにも、転職サイトを大いに利用してみてください。 きっとみなさんの希望に近い転職が出来るはずです。