薬剤師が本来求めるべきもの~年収?やりがい?~

 薬剤師の転職率は他の職種に比べても高くなっています。
年収に納得できない、人間関係が辛い、薬剤師としての先が見えないなど理由は様々です。
転職を考えることは悪くありません。転職理由を確かに持って行うことで有意義な転職になります。

薬剤師の今の立ち位置

 薬学部が4年制から6年制に移行しました。
 これに伴い薬剤師がおかれている立場は少なからず変化してきています。
 一番大きな違いは『初任給』でしょう。
 

病院薬剤師の初任給アップ

4年制時代の病院薬剤師の初任給は168,000円です。
これを多いととらえる薬剤師はいないでしょう。

一方、6年制の初任給は200,800円となり、32.800円のアップとなっています。
2年間で昇給する割合を考えるとこれは大きなベースアップと考えて間違いありません。

薬学部を6年間出ているということで、初任給に関心が集まらないわけはありません。
私は私立の薬学部に進学していたため、学費は年間200万円近くなっていました。
学生時代からしていた研究をつづけることが出来る環境に身を置きたいと思っていても、実際それに見合う給料がなければ奨学金の返済もままならなりません。

これを解決した初任給200,800円は、私にやりがいを求めても良いものだと教えてくれました。

薬局薬剤師の初任給は変化した?

結論から言うと、薬局薬剤師の給料に大きな変化はありませんでした。

というのも薬局やドラッグストアの薬剤師はもともとの初任給が高めに設定されています。
このため、6年制に移行したといっても大きな増額はみられなかったというのが実際です。
病院と薬局を就職候補に選んでいた私は、その給料面だけでなく、今後の薬剤師の行く末を考えるようになりました。
そうすると、薬剤師としてあまり評価を得ていないように思える薬局にやりがいを感じることが出来なかったというのは正直な意見です。
そのため、私は大学卒業と同時に病院に就職することを決意しました。

医療現場での薬剤師は?

薬剤師は医療現場での需要が増してきています。

その中でもチーム医療については頭角を現してきているといっても過言ではありません。
がん、栄養サポートチーム、感染制御対策チームなどでは薬剤師の介入による質の向上について、論文や学会発表などで多く報告されています。

理想と現実とはよく言いますが、給料だけでは働き続けるモチベーションになることは決してありません。
薬剤師が実臨床でおかれている立ち位置はやりがいに大きく影響します。
しかし、これは、病院で働かないことには気づくことが出来ない部分だと思います。

病院薬剤師の離職理由とは

薬剤師は1年未満で離職する人が最も多いとされています。
その離職率は9%とされ、年数を重ねるほど少しずつ離職率が挙がっていきます。
給料が低いとされる病院薬剤師でさえ他の職種と比較すると高くなっています。

病院薬剤師の最大の離職理由

薬剤師の職域で最も離職率が高いのが病院薬剤師といわれています。
数値としては20%を超える数字が算出されている報告もあります。
病院は、医師や看護師などの他職種と関わりながらの業務となるため、職種間のかかわりや関係性が重要となります。
そのため、『人との関わり』が苦手な人には苦痛になるのでしょう。

また、業務の過酷さにも定評があります。
薬剤師で当直・夜勤があるのは病院だけでしょう。

朝から次の日の朝までの勤務。しかもこの間の業務を夜間一人でこなすと思えばその体力は削られ、精神的なプレッシャーも相当なものになります。

事実、私が病院薬剤師として働いている7年の間にも、10名以上の多くの若手薬剤師を見送る結果となりました。
では若手薬剤師を見送ってきた私の転職を考えた理由は、ずばり『理想と現実のギャップ』です。
6年制薬学部教育で学ぶ教育は、多くの場合大学病院などの比較的大規模な病院で行っている薬剤師像を提唱しています。
これをもとに病院で働きはじめた場合、『話が違うじゃないか』と思う気持ちが正直な意見です。

  ・調剤ばかりで患者さんに服薬指導する暇もない。
  ・きつい当直明けは昼まで調剤をする
  ・やりたくもない学会発表テーマの調べ物に明け暮れる時間外

  
こんなことをしているようでは我慢にも限界があります。
私がなりたかった薬剤師はこんなものではないと見限ってしまいます。
こう思うと転職希望の気持ちは膨れ上がる限りです。
いつしか転職サイトばかり眺めるようになってしまった自分がいました。

薬剤師のやりがいとはなにか

薬剤師は非常に贅沢な仕事です。
薬剤師でいれば食べていけないことはまずないでしょう。
誰しもうらやむ薬剤師であることの誇りをもつべきです。

薬剤師の知識は学生時代の賜物

学生の時に勉強した知識を仕事の直結させることが出来ます。
多くの仕事は、学生時代に学んだことを使わなくてもできる仕事の方が多いです。
せっかく大学に進学したにも関わらず、4年間で得たものはアルバイトと遊ぶことだけでは勿体ないとは思いませんか?
もちろん、そこで培った人間性を疑うわけではありません。
しかし、就職活動をする時期になり慌ててスーツに身を包み手当たり次第にいろんな企業に出願している姿をみるともっと有意義な学生生活を送ればいいのにと残念な気持ちになります。
そのため、学んだことを生かせる薬剤師という職業は日々の研鑽を必要とはするものの即戦力として貢献できることだけでなく、その特異性を生かした安定した職業であることを感じさせます。
そのため、薬剤師はやりたいことを存分に選ぶべきです。
やりがいを殺してまで働き続ける職場は今後い続けるに値しません。
百歩譲ったとしても、やりたいことにチャレンジする職場環境を作るべきだと思います。

仕事をする上でやりたいことばかりができる職場はないと思っています。
服薬指導ばかりできるそんな都合のいい職場はないです。
そのため、上司に依頼された仕事はきちんとやるべきだと思っています。
しかし、その反面、私がやってみたい臨床研究や新たな手法の業務展開など私の気持ちを汲んでくれる環境がないと尽くしても尽くしても意味がないと感じてしまいます。

給料と労力

肉体労働という言葉をご存知でしょうか?
体を使って時間をかけてお金を稼ぐことです。

寝る時間を削って働き続ければある程度はそれに見合ったお金を得ることが出来るでしょう。
仕事の掛け持ちをして生計を立てている人もいます。
しかし、それでは仕事内容を選ぶことは到底できません。
薬剤師という職業はその給料を時間で買っているわけでないのは十分ご承知の事実でしょう。

薬剤師を羨ましく思う人はこの単位時間当たりの給料が目に留まるはずです。
では、薬剤師として働く上ではどうでしょう?
始業から終業まで同じ時間働いていても給料が異なる。
歩合制だと思わなければその不満は解消されません。
病院薬剤師は薬局薬剤師と違ってお金を稼ぐことが難しいとされています。
いろいろな算定が組み込まれていますが、基本的には1回の服薬指導あたりの値段が薬剤師が病院にもたらす金額といっても過言ではありません。

それに貢献しようと月に100件の算定は当たり前でした。
しかし、それは私一人だけ頑張っていても仕方ありません。

頑張らない薬剤師がいることで私の頑張りは帳消しにされてしまいます。

むしろ頑張らない薬剤師が多ければ多いほど私の負担が増える一方です。

これを訴えても変わらない、頑張らない薬剤師がいる職場環境では、そのモチベーションを保つことはできませんでした。

自分と同様の件数は出せなくとも、目標に向かって頑張る姿勢を感じないと私一人疎外感を感じてしまいます。

いっても響かない環境。

やりがいを失うには十分な理由です。

薬剤師の本質的なやりがい

薬剤師の一番のやりがいは、患者さんに薬から触れ合うことです。

薬剤師の仕事に調剤があります。

これは、誤った薬を服用した患者さんが死亡してしまったことがあるため、患者さんにきちんと正しい薬を手渡すことが薬剤師の責務となっているからです。
では、薬は正しい薬を渡すだけでその治療は進むのでしょうか。
患者さんに手渡した薬が合っているだけでは治療がうまくいくわけもありません。
これが一番顕著にわかるのは、医師の内服薬と注射薬の処方の仕方です。

注射薬は処方されれば患者さんの体内に必ずと言っていいほど入ります。
そのため、コンプライアンスは100%です。

では内服薬ではどうでしょう。

内服薬は患者さんがきちんと服用することを前提として成り立っています。
しかし、実際の患者さんは飲み忘れた、症状がなくなった、服用の必要性を感じないなど様々な理由でコンプライアンスが100%を下回ります。
医師はここで大きな勘違いをします。

患者さんは思い通り薬を飲んでくれません。

このコンプライアンスを100%に近づけること、これが治療に影響することを実感してしまうとこれに力を注ぎたくなる気持ちをわかる薬剤師も少なくないでしょう。

どうすれば、患者さんがきちんと飲んでくれるのか、それに必要な知識は何か、どんな言葉をチョイスして指導すればわかってもらえるのか、そんなことを考えながら服薬指導をしていると、患者さんとの繋がりを感じることが出来ます。

説明をしたあとの患者さんから『ありがとう、あなたのおかげでよくわかりました』の一言がやりがいを感じさせてくれます。

  

薬剤師として働くうえで大切なもの

 

薬剤師の離職理由は次の3つと言われています。

1.長い勤務時間(サービス残業)

2.職場の人間関係(パワハラ、イジメ)

3.業務内容と収入の差(見合った給料がもらえない)


私もこれには同感です。

辞めていった職場の後輩や転職を考え行動した自分の理由はこれに準じるものでした。
結論からいうと、定時で帰れる人間関係の良い職場で見合った給料があれば離職しません。
これは薬剤師一人ひとり価値観や考え方が違うので答えは出ませんが、私はそうではないと思っています。
私が転職しようと思った理由は、これにすべて当てはまります。

1.業務時間内に終わらない業務をこなすために日をまたぐことが多い

2.当たり前のように繰り返される特定の主任からのいじめ

3.算定件数は部内一なのに見合った対価や評価を得ていない


家族との時間を大切にしたいのに何を好き好んで残業するでしょうか。
業務に支障の出るいじめは人間として間違っていると思います。
薬剤部に一番貢献している私に対してねぎらいの言葉もないのはいかがなものでしょうか。

  私もまだまだ未熟ものなので仕事内容に見合った対価や評価がほしいです。
これを甘い考え方と思う考え方が間違っていると思います。
その仕事を評価できないというのであれば、転職するほかないと思います。
私は卒業後勤め続けた病院から転職することを決めました。

それは、家族もあり病院を続けるのか給与面の良い薬局を選択するのか苦渋の選択でした。
しかし、妻は、『あなたのやりたい仕事なんだからやりたいことをやればいいよ』と声をかけてくれました。
あとから、『それでも家族の時間は今より大事にできる職場にしてね(笑)』と念を押されましたが(笑)。

ただ、一人で生きているわけでない私は、家族の支えがあり、家族の支えになることを念頭に置くことで、
私が追求したかった薬剤師としての研究者のやりがいと、家族を支えることのできる給与面を選ぶことが出来ました。

自分が納得できない嫌なところばかり探したネガティブな転職ではなく、自分がやりたいやりがいを目指した転職をするべきだと思います。

  薬剤師のやりがいに患者さんとの関わりや研究による自分が直接かかわることが出来ない患者さんへのフィードバックを常に考えていた私は、
家族の時間を持ちつつ研究が出来る新しい環境を探して転職することにしました。

幸いに大学病院にて勤務することができ、病棟の患者さんに触れ合い、日頃の問題点や疑問点を臨床研究や基礎研究で解決するべき研究を行っています。


前の職場は仕事がとても遅くて帰るのも日をまたぐことが多かったです。
今の職場は研究しているときこそ22時に帰ることもありますが、普段は18から19時には家に帰ることが出来ています。
子供が起きている時間に家に帰ることが出来ることは変えられない幸せです。
 

まとめ

 薬剤師は国家資格であるという最大のメリットから働いている条件に見合わないと転職を考える人が多い職業です。

しかし、仕事のやりがいを求めても良い数少ない職業でもあります。

これを最大限に生かし、転職支援サービスに頼って職場環境・待遇とやりがいをどちらも求める転職をしましょう。