1.なぜ人気のないドラッグストアに就職したの?私が仕事に求めること
私はとある大手のドラッグストアで働いていました。
今でこそドラッグストアの人気は高くなってきていますが、私が就職活動をしていたころはドラッグストアに就職する薬剤師なんて学年に数人しかいません。
そんな私はドラッグストアで働いていてたくさんのやりがいを見つけました。
しかし数年働くうちに、私は仕事にまた違ったやりがいを求めるようになります。
働く上で何をやりがいにするのか、私の心境の変化を交えながらお話をしていきます。
私がいた大学は1学年に120人ほどいました。
そのうちドラッグストアに就職を決めたのは自分を含めてたったの3人です。
友人に「どこに就職するの?」と聞かれた際に「ドラッグストアだよ」と答えると大半の方が少し驚いたような顔をします。
それもそうです、せっかく6年も大学に通って必死に勉強したのにドラッグストアを就職先に選ぶなんてほとんどの方はしません。
薬剤師なのにレジ打ちや品出しなんてしてられないと思っている方がとても多いんですね。
しかし私はむしろ薬剤師以外の仕事にも多く関われることに面白みを感じていました。
もともと薬剤師という仕事に興味があって薬学部に入ったわけではないのもあるでしょう。とくに薬剤師の仕事についてこだわりはありませんでした。
それに調剤という仕事自体も好きではありません。
ここまでいうと何で薬学部に入ったんだよと突っ込まれそうですが、とにかく私は普通の薬学生が薬剤師になってからやりたいと思っていることにあまり興味がなかったのです。
そもそも大学5年生のときにあった調剤薬局の実習で、とてもひどい目にあったので調剤薬局に行く気すら起きませんでした。
病院実習はとてもよい病院に配属され毎日が刺激にあふれていてとても楽しい時間を過ごせました。
しかし多額の奨学金を借りている私には、病院の給料だけでは生活費がたりなくなるのは目に見えています。
そんなこんなであまり人気のないドラッグストアを選んだのです。
ドラッグストアはドラッグストアでもOTC専門です。完全に調剤をする気はありません。
当時の私はドラッグストアの面接を受けるときの志望理由としてこんなことを書いていました。
「処方せんにそって調剤するのは面白くない。自分で患者さんの症状を聞いて自分で判断してお薬を選んであげたい。
だからドラッグストアを選んだ」と。
薬剤師は薬の袋詰をしているだけだと揶揄されることがしばしばありますが、学生のころは私も少しばかりそのような考えを持っていました。
だから医師の指示に従って調剤をするよりも、自分の頭で考えてお薬を選んでいく仕事がしたかったのです。
もちろん処方せんなしでそのようなことができるのはドラッグストアだけです。
学生のころの私は、「自分で選んだ薬を使って患者さんを元気にしたい。受動的でなく能動的に職能を発揮したい」と思っており、それができる環境を職場に求めていました。
2.実際にドラッグストアで働きはじめて感じた仕事の楽しさ
ドラッグストアに就職して最初の3ヶ月ほどは、すべての薬剤師が調剤研修をしなければなりませんでした。
学生時代の調剤実習での悪夢が蘇り、かなり精神的に病んだ日々を送っていました。
調剤をすることでここまで病む薬剤師は私以外にめったにいないでしょう。
ちなみに調剤実習でいったい何があったのと気になっている方がいるかと思うので簡単に説明しておきますね。
簡潔にいうと、実習先の薬剤師にいじめられていたんです。
私以外にもう1人同じ実習先に行っている同級生がいたのですが、2人で本当に魂を吸い取られながらなんとか実習期間を終えました。
ひたすら私たちがやることなすことにチクチクと嫌味をいってきたり、ときにはバカにするような発言をしてきたりと、まあひどい扱いを受けていたんです。
そんな嫌な思い出が調剤室にいるだけでふつふつを蘇ってきてしまうので、職場で行われたたった3ヶ月の調剤研修でも夜に眠れないほど病んでいました。研修が終わりやっとOTC専門の売り場に配属された日はまるで天国に来たかのような清々しさでした。
調剤をしなくていいってこんなに幸せなんだな、やっぱり自分に調剤は向いていないとハッキリとそのとき確信したのを今でも覚えています。
もちろんはじめてみるようなOTC医薬品の数に圧倒され、どのお薬にどんな成分が入っているのかを覚えるのはとても大変でした。
それでもお客様に接客した後に「ありがとう」と言われれば、薬を覚える大変さなんてまったく気になりません。
調剤をやっているときは患者さんからありがとうと言われたことなんて一度もありませんでした。
むしろこちらの薬の説明をまったく聞かない、少しでも待たされると怒鳴りちらしてくるような方もいてイライラしてしまうことばかりです。
だからこうやって「ありがとう」と感謝されることがとても嬉しかったです。
薬剤師を必要としてくれる方がドラッグストアにはたくさんいるんだなとも思いました。
3.ドラッグストアの仕事に慣れてくると「これは違う」と思うことも出てくる
幸か不幸か、私は日本全国でも片指に入るくらいに売上が高く忙しい店舗に配属されていました。
朝5時に起きて6時に家を出て8時から勤務。忙しすぎて休憩も取れませんし、ご飯を食べられないことだって普通にあります。
休憩中に店長から仕事を振られて、休憩時間を潰されてしまったり、勤務終了後に当たり前のように仕事が組まれていたりで家に帰り着くのは22時前後になってしまいます。いくらお客さんに感謝される仕事だとしても、これでは体力が持ちません。
都会のドラッグストアなので、横に広いドラッグストアではなく縦に長いところで働いていたのですが、品出しはすべて階段を上り下りしてやります。
1階から5階まで何度も何度も往復するので体力の消耗の激しさは半端ではありません。
就職のために九州から関東に出てきた身だったので、こんなに忙しいドラッグストアがあるなんてまず知りませんでしたし、ここまで重労働だとも思っていませんでした。「ここまでドラッグストアは重労働なのか!」というのがまず1つ目の思っていたのと違ったポイントです。
まだまだ思っていたのと違ったことはあります。風邪薬を買いに来られたお客様に対して、自分なりにしっかりと吟味してお薬を紹介したときのことです。薬剤師として何も間違ったものはご紹介していないはずなのですが、後から店長にそのことに関して呼び出されてしまいました。何をしたんだろうとびくびくしながら店長のもとへ行ったのですが「なんであの薬を売ったの?今売らなきゃいけない薬わかっている?」と言われたんですよ。
この店長は私が見てきた歴代の店長の中でもとくに強化品の販売にうるさい店長。
少しでも違うものを売るとこうやって注意してくるんです。
私はお客様に必要なお薬を売った自信があったので、間違ったことをしただなんて少しも思っていません。
売上や利益のことばかりを考えて、どのお客様にも同じお薬を売ろうとする店長の考えが受け付けられませんでした。
ドラッグストアってお客様の健康を守るためにあるんじゃないの?就職活動のときには実際に人事の方からそう伺っていたはずだけど違うの?といろいろと考えているうちに、「こんなドラッグストアで働き続けるなんてムリだ」と思うようになりました。
4.「薬剤師のやりがいって何?」を考えるようになる
重労働だったり強化品を売らないと怒られたりで、すぐにでもこのドラッグストアを辞めたいと思っていたのですが「別の店長に変わったら店の状況も変わるだろう」と考えているうちにあっという間に入社して4年も経過していました。
4年間、最初に配属された店舗から一度も異動がなかったのでずっと忙しいお店でバタバタと働き続けていました。
これだけ年数が経つと、重労働も強化品のゴリ押しももはや当たり前にすら感じてしまいます。それでもどこか心の奥で「こんな気持ちで仕事をしていたら、やりがいなんて少しも感じられない」という思いはありました。
私がドラッグストアに入った理由は自分でお客様の症状を見て自分の力でお薬を選んであげたかったから。
しかし会社の言いなりになって働いているだけではこれは不可能です。
売るべき商品が決まっているので、お客様の話を聞くだけ聞いて結局はこちらが売りたい商品を売っているだけ。何のやりがいも感じません。やりがいを意識しだすとこのまま今のドラッグストアで働く気にはもちろんならず、少しずつ転職という言葉が頭に浮かぶようになります。仕事ってやりがいを見いだせないと毎日がただのルーチンワークになってしまうんですね。ひたすら決まった仕事をこなしていくだけで何も身につかないんです。これは給料だけ貰って時間をムダにしているようなもの。そう考えると頭をよぎっていた転職という言葉がよりはっきりと目の前に見えてくるようになりました。
5.「ドラッグストアなんてどこもブラックだよ」という言葉をキッカケに調剤薬局を目指す覚悟を決める
私は調剤薬局が嫌いです。学生時代に受けた実習先の薬剤師からの嫌がらせが大きな原因ですが、調剤という業務自体にどうも愛着がわかないのです。だから調剤薬局で働くなんて一生ないだろうと思っていました。でもこの考えはある人の一言で変わったのです。それは薬剤師のドラッグストア業界に詳しい方からの言葉でした。「ドラッグストアなんてどこに行っても結局はブラックだよ。売上や利益にまっすぐ進めない薬剤師は向いていない。」と言われたのです。ドラッグストアは結局のところは小売りであることから、売上や利益を追い求めることは何も不思議なことではありません。むしろ当たり前のことです。その当たり前のことに違和感を覚えるのならドラッグストアで働く薬剤師には向いていないというんですね。たしかにこの方のいうことは間違っていません。小売企業が売上や粗利を気にするのは当たり前のことです。ただドラッグストアの運営方法にならって働けるかどうかは、おのおのの薬剤師によって違います。私はどうもドラッグストアには向いていなかったのでしょう。どうしても売上や利益だけを目指して走り続けることができませんでした。薬剤師としてはそれで正しいのかもしれませんが、会社からしたらそんな人材はきっといらないでしょう。だから私は転職する決意をしました。転職先は調剤薬局です。
6.やりがいを求めて調剤薬局へ転職
仕事のやりがいって何だろうと考えたとき、私は誰かの役に立てることできっとやりがいを感じられるはずだと思いました。売上や利益を伸ばすことにやりがいを感じられるならドラッグストアで働き続けられたのでしょうが、私にはそれができません。はじめてドラッグストアで働いたときに言われたお客様からの「ありがとう」があれだけ嬉しく感じたのは、自分が相手の役に立てたと実感できたから。売上や利益を追い求めるのに向いていない私は、一時は毛嫌いしていた調剤薬局でも今の私ならやりがいを持って働けるはずだと思い、転職先に調剤薬局を選びます。転職に伴いついでに残業が少なく年収も今より上のところを希望しました。転職サイトを使って転職活動を進めていったのですが、担当のエージェントにこちらの希望を伝えておくと希望に合う求人をどんどん送ってきてくれるので仕事をしながらでも転職活動を滞りなく進めることができました。
結果として残業なし、年収は今よりも少し上がりついでに自宅からも近い調剤薬局に転職。学生時代の嫌な思い出が頭に残りすぎて最初はやはり調剤業務を苦手に感じていましたが、慣れてくると調剤を楽しめるようになりました。田舎の調剤薬局に転職したのもあり、予想よりはるかに患者さんにも恵まれています。調剤研修のときには聞けなかった「ありがとう」の言葉も今はたびたび貰っているのは自分でもびっくりです。きっと学生のころや研修のときはただ調剤して終わっていたのでしょう。今はどうすれば患者さんのためになるのかを考えて調剤しています。それが患者さんにも伝わっているのだと思います。
7.まとめ
調剤は自分には向いていな、嫌いだからやりたくないと思い遠ざけていた調剤薬局。しかし今はその調剤薬局で働いています。仕事で大切なのはやりがいだと気がついたのです。本当に自分がやりたかったことが仕事でできなければ、仕事は一気につまらないものになってしまいます。逆にやりがいを見い出せば、それまで何の魅力もなかった仕事が急に輝き出すことだってあるのです。転職をすることで仕事のやりがいの大切さを学びました。
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